大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福島家庭裁判所郡山支部 昭和43年(少ハ)2号 決定

本人 T・N(昭二三・七・二七生)

主文

本件申請を却下する。

理由

本人は昭和四二年七月二一日恐喝未遂並びに暴行保護事件により当裁判所において特別少年院送致の決定を受け、特別少年院としての盛岡少年院に収容されたものであるが昭和四三年七月二七日で満二〇歳に達するためその前日をもつて収容期間が満了するところ、昭和四三年七月四日盛岡少年院長渡辺正止より未だ犯罪的傾向が矯正されず退院を不適当と認めるとして本件収容継続申請がなされた。その申請の具体的事由は同申請書添付の意見書記載のとおりであるからこれを引用(編省略)する。

当裁判所は本件審理のため盛岡少年院分類保護係長板橋富士男、同教官菅重雄の意見並びに本人及び保護者(実父)の供述をきいた。

ところで本人は昭和四二年七月二五日本少年院に入院以来反則事故等もなく順調な経過をたどり昭和四三年四月一日に一級の上に進級するとともに精勤努力賞を受け、同年四月一五日少年院長より東北地方更生保護委員会に対し本人の仮退院許可申請がなされたが、これにつき同委員会では本人の仮退院後の保護観察期間が短時日であり又本人が従前暴力組織との関係を有していたこと等から予後についての不安が少なくないのでむしろ収容継続の処置をとることを考慮すべきものとして仮退院許可をなさず、その結果本件収容継続申請がなされたことが認められる。

なるほど、本人は昭和四〇年一〇月二一日前件(窃盗、暴行)非行により当裁判所において保護観察決定を受けており、その当時既に暴力組織との結びつきを有していたが、この関係は、上記決定にもかかわらず却つてその後一層強まりその結果本件非行に至つたものでこの生活態度が是正されない限り本人の社会復帰後の見通しにはかなり不安が存することは否定できない。しかしながら審判の結果によれば本人並びにその保護者は従前の失敗を反省し、これを機会に暴力組織からの絶縁を真剣に考えていることがうかがわれ、退院後本人は家業である農業に精進することを誓約しており、この点はかなり期待が持てるものと思われるのであつて、これらの事情と前記のような本人の在院経過を総合検討するとこの際本人に対し引き続き少年院に収容し或いは仮退院後の保護観察期間を設定するための収容継続をなすことは、本人の更生意欲をそぎ、むしろマイナス面が大きいものと言わなければならない。

そこで本件収容継続申請を不相当として却下することとし主文のとおり決定する。

(裁判官 長崎裕次)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例